私は怠惰な園丁である。

ここ武蔵野の片隅に小さな小屋をこしらえて、
教会の屋根の隙間に陽の昇るのを窓辺に眺め、
マンションの片隅に黄昏れる西陽の影を額に受けるまで、
窓辺に寄り添いながら、架空の庭園を夢見ている。

草取りも、水やりも、病虫害の世話、肥料の施し、剪定と園丁の仕事に休日はない。
それでも私は窓辺から離れず、傍らのテーブルにグリットを刻みながら、頭蓋の裡に生起する<秘密の花園>を夢想する、怠惰な園丁である。

「西洋造園史」に始まり、「庭園との対話」「架空の庭」「庭のシュルレアリスム」「トピアリーの作り方」「作庭術」へ、 「テーブルの上の庭園」「地下庭園」「官能の庭」「庭の奇想学」等々手当たり次第に書棚から引き出しては、頁に付箋を貼り続ける。テーブルの上には見事な庭の遠近法が描かれているのだが、
現実の庭は見事にそのパースペクティブを破綻させ、月明かりの中で不安定に眠っているのだ。

ここに敢えて紹介する草木は、実に不憫なものたちである。
森の中のように乏しい光、栄養失調寸前の身体、害虫の襲来、病気の蔓延・・・と
すべて園丁である私の責任である。
それでも季節が巡ってきては、健気に,ささやかに花実をつけるのは、ひとえに彼らの力によるものである。
彼らへの贖罪と、園丁への断罪とそしてこの場を訪れるすべての人の想像力により築かれるであろう、<ケルビムの庭>のために、すこしづつ、いとすこしづつ、送らせていただこう。

(園丁 記)

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